なぜ副都心線ユーザーが2限に遅刻するのか(1)-運転間隔の調整-

1. はじめに

筆者は某大学に通っているなんの能力も持たないレベル0の学生である。そんな俺には、なぜだか不幸を呼び寄せてしまうという悩みがある。せっかく2限に間に合う時間に家を出たはずなのになぜだか乗り継ぎが上手くいかずに間に合わないのだ。俺が新宿駅から徒歩10分ほどかけて新宿三丁目駅副都心線ホームに到着するとたいてい電車が行ったばっかりで、次に乗るべき電車がしばらく来ない。運が悪いときには新宿三丁目駅のホームで15分近くも虚無と一緒に過ごし、やっとこさ来た電車は押すな押すなの大混雑なのである(押さないと乗れないわけなので押すしかないのだが)。そんなとき、俺はふと、

 

「神も無ェ、仏も無ェ、電車もそれほど走って無ェ」

 

という今の感情とはまるで対になるような軽快なリズムが頭を過ぎってしまう。

 うん、朝からもう大変だ、帰りたい。

 

「俺らこんな線いやだ〜、俺らこんな線いやだ〜、JRへ出るだ〜」

 

となりそうな気がしてきたので、なぜ10時半ごろの副都心線は乗り継ぎが上手くいかないのか、原因を考察してみようと思う。

2. 運転間隔の調整

鉄道ダイヤの話をする以上、ある程度鉄オタぐへへ話に入ってしまうことをご容赦いただきたい。とはいえ、この記事を読んでいるのはおそらく都心の電車を毎日のように使っている人だと勝手に思っているので、各々の経験をもとになんとか読んでいただけるものと考えている。

 

早速ではあるが、以下に例題を示してみよう。あとでこの例題を出題した意味を述べるので、あまり深く考えずに読み飛ばしていただいて構わない。

 

例題)
路線Fでは、1000人が乗っている電車が続々とA駅に到着し、D駅まで各駅に停車しながら運転されている。また、各駅間の所要時間はちょうど2分である。
A駅の到着時刻は列車aが09時56分、列車bが10時08分、列車cが10時12分、列車dが10時24分であった。
A〜C駅において、電車が発車してから1分経過するごとに、乗車したい人数が50人増えるものとし、また各電車において、乗車人数の20%が下車したいものとする。
乗降人数が100人増えるごとに、乗降時間が10秒多くかかるとして、D駅の列車b〜dの到着時刻を求めなさい。
ただし、A駅において列車aは09時57分に発車したものとし、列車aに関してのみ各駅の停車時間はちょうど1分である。

 

解答)

表にするとこんな感じになる(間違ってたらごめんなさい)

  列車a 列車b(前列車から12分後) 列車c(前列車から4分後) 列車d(前列車から12分後)
  時刻 列車人数 時刻 列車人数 時刻 列車人数 時刻 列車人数
A駅 到着時刻 09:56:00 1000人 10:08:00 1000人 10:12:00 1000人 10:24:00 1000人
A駅 降車人数 200 800人 200 800人 200 800人
A駅 乗車人数 600 1400人 200 1000人 600 1400人
A駅 乗降時間 80 40 80
A駅 発車時間 09:57:00 10:09:20 10:12:40 10:25:20
B駅 到着時刻 09:59:00 10:11:20 10:14:40 10:27:20
B駅 降車人数 280 1120人 200 800人 280 1120人
B駅 乗車人数 600 1720人 150 950人 600 1720人
B駅 乗降時間 80 30 80
B駅 発車時間 10:00:00 10:12:40 10:15:10 10:28:40
C駅 到着時刻 10:02:00 10:14:40 10:17:10 10:30:40
C駅 降車人数 344 1376人 190 760人 344 1376人
C駅 乗車人数 600 1976人 100 860人 650 2026人
C駅 乗降時間 90 20 90
C駅 発車時間 10:03:00 10:16:10 10:17:30 10:32:10
D駅 到着時刻 10:05:00 10:18:10 10:19:30 10:34:10
      前列車から13分10秒後に到着 前列車から1分20秒後に到着 前列車から14分40秒後に到着

 

(飛ばした方、ここから読んでください)

注目すべきは、

・運転間隔がバラバラ

・バラバラの運転間隔のせいで乗車人数に大きな偏りが生まれ、結果として乗降時間も大きな偏りが生まれてしまっている。

・乗降時間の偏りのせいで、不均等な運転間隔はさらにひどい不均等になってしまっている。

・当然、前列車からの時間が空いた電車ほど混雑が激しくなってしまう

という、「運転間隔不均等がもたらす負のスパイラル」であるのだ。

(この例題は実際の例を簡単にしたものに過ぎないが、運転間隔不均等がよくないものというのがなんとなく伝わっていれば幸いである。また、田舎であれば運転間隔が不均等だろうと問題ない。これは乗車率が100%を優に超える都心に限った話である。というかそもそも田舎は前列車が1時間前だったりする)

 

そして、実際にこうなってしまった状態を「団子運転」ということがある。

この「団子運転」、実はバスにおいては日常茶飯事で、激混みバスのすぐ後にガラガラバスが来た、なんて経験がある方もいるのではないだろうか。

それはやはり「運転間隔不均等がもたらす負のスパイラル」なのだ。

例題では、初期状態で運転間隔をかなり不均等にしていたが、例えばドア点検で生じたたった2分の後続列車の遅れが、結果的に20分の遅れに拡大した、なんてことも起こってしまう。

 

じゃあ、諦めるのか? 「運転間隔不均等がもたらす負のスパイラル」を黙って受け入れるのか?

 

否。

 

後ろが2分遅れているなら、前もわざと2分遅らせて、運転間隔を均等にさせよう。ダイヤを管理する運転指令さんは前の列車の運転士に対してそのような指示を出す。

読者の方がもし運転指令だとしても、きっとそのような指示を出すのではないか?

 

これがいわゆる「運転間隔の調整」というヤツだ。

 

さて、積極的に運転間隔の調整しようぜ、という気になってきたであろうか。

 

もし各駅停車しかない路線(山手線とか)であれば、それは構わないのであるが(待たせられる前列車の乗客からしたらたまったものではないが)、例えば急行と各駅停車が走っている路線ではそういうわけにもいかない。

 

「各駅停車は急行から逃げなければいけない使命があるから」である。

 

つまり、のんびり運転間隔調整ができない……ということだ。

 

 

次回、「緩急接続と通過待ち」編です。