第2羽「小田急を愛した少女と小田急に愛されない少女」

新百合ヶ丘駅 9:00〜

 

ココア「今日はチノちゃんと箱根に日帰り旅行に行くよ!!」

 

チノ「父の知り合いのお店に行ってコーヒー豆を譲ってもらうだけですからね。」

 

ココア「せっかくだし温泉入ろうよ〜」

 

チノ「は、入らないです!」

 

ココア「そんなあ…」

 

チノ「……早く特急券を買いますよ。」

 

ココア「とっきゅうけん?チノちゃん、わたし風牌をポンしただけで上がるのは嫌いだよ。」

 

チノ「何言ってるんですか?……さすがに通勤列車で箱根まで行くのは時間がかかるので、今日はロマンスカーを使います。」

 

ココア「そういうことか〜。やったあ!わたしロマンスカーはじめてだよ!」

 

チノ「ココアさんは初めてですよね。私が特急券の買い方を教えるのでその通りにやってください。」

 

ココア「おっけー!わかったよ!」

 

-10分後-

 

チノ「な、なんとか買えましたね….…」

 

ココア「どうして私が使ってた券売機壊れちゃったんだろ……」

 

チノ「ココアさんのPASMOってICカードステッカー貼ってますよね…」

 

ココア「うん!チノちゃんのICカードステッカー貼ってるよ!!」

 

チノ「わたしですか……じゃなくて!!基本的にPASMOICカードステッカーを貼ったまま券売機でチャージするのは禁止されています。……それとわたしのステッカーとか恥ずかしいので今すぐ捨ててください。」

 

ココア「貼ったままはダメなの?なんで??」

 

チノ「券売機が詰まるからです!」

 

ココア「え?あ、ああ確かにそうかも…」

 

チノ「貼ったまま券売機に入れちゃダメってICカードステッカーの注意書きに書いてなかったですか?」

 

ココア「読んでないよぉ…」

 

チノ「そんな気がしました。まあ今回は大目に見てくれてよかったですね。直らなかったら本当に弁償ですよ。」

 

ココア「券売機っていくらするんだろ…」

 

チノ「そういう問題じゃないです!とにかく気をつけてください。」

 

ココア「はーい…」

 

チノ「……次はしないでくださいね。じゃあホームに行きますよ。」

 

ココア「えーとロマンスカーは……ん?」

 

チノ「どうしました?」

 

ココア「9:21発のロマンスカーだよね?」

 

チノ「はい。」

 

ココア「たしか箱根湯本行きだよね?」

 

チノ「はい。」

 

ココア「片瀬江ノ島行きになってるよ!!」

 

チノ「そんなことないです。確かに箱根湯本行きのはずです。」

 

ココア「だってほら…特急えのしま9号って…」

 

チノ「私たちが乗るのは特急はこね9号ですよ?」

 

ココア「どーなってるの??」

 

チノ「たぶん…多層建て列車なのでしょう。」

 

ココア「多層建て?2階建てってこと??」

 

チノ「いえココアさん、全然違います。えーと……わかりやすい例は東北新幹線E5系E6系ですかね。」

 

ココア「わかりやすい…?え?全然わからないよ!」

 

チノ「つまり、前から何両目かは箱根湯本行き、後ろから何両目かは片瀬江ノ島行きといった具合です。」

 

ココア「電車が分裂するの!?」

 

チノ「分裂というか分割ですね。まあ分裂でも間違ってるわけではないと思いますけど……」

 

ココア「なるほど…。てことはやっぱり次の電車でいいんだね!」

 

チノ「そうですね。でも?………あ、やっぱり…。よく見れば特急はこね9号もちゃんと書いてあるじゃないですか。ココアさんもっとよく見てください。」

 

ココア「あ、ほんとだ!なんで気がつかなかったんだろ!」

 

チノ「てことで早く乗車位置に行きましょう。」

 

ココア「うん!3両目だよね!えーと3両目、3両目と…あった!ここだよ!!」

 

チノ「あーココアさんそれはVSEの乗車位置です。乗るロマンスカーはEXEなのでそこじゃないですね。」

 

ココア「VSEとかEXEとかなんなのそれ?」

 

チノ「ロマンスカーの種類です。2017年現在は古い順にLSE、EXE、VSE、MSE、EXEαの5種類があります。種類によって車両の長さが違うので乗車位置も変わってくるんですよ。」

 

ココア「なんでバラバラにしたの!?車両の長さが違うならホームドアつけられないじゃん!」

 

チノ「ココアさん珍しい…鋭い質問ですね。 確かにロマンスカーは同じ10両編成でも種類によって全長が違い、ドア位置もバラバラなので、一部の駅はホームドアをつけることができません。あと、さっきのココアさんみたいに、種類によって乗車位置が違うということで、乗客に分かりづらいという懸念もあります。」

 

ココア「同じ10両編成でも全長が違うなんて驚きだよ…」

 

チノ「全ての原因は箱根湯本駅のホームかもしれません。箱根湯本駅のホームは通常よりもかなり短くて、通勤列車の長さで10両編成を入れると3両分くらいホームからはみ出てしまうんです。だからVSEはあえて1両の長さを短くすることで10両分を箱根湯本駅のホームに入れるようにしました。LSEもまあほぼ同様です。」

 

ココア「は、はみ出るなんて……で、残りのEXEとMSEとEXEαは?」

 

チノ「この3種類は通勤列車と同じ車両の長さです。つまり箱根湯本駅に10両分を入れることはできません。」

 

ココア「じゃあどうするの?」

 

チノ「はい、10両分は入らないので、6両だけを箱根湯本駅のホームに入れます。それで、残りの4両は途中の小田原駅止まりにするか、特急えのしま号として片瀬江ノ島行きにしたりします。稀に10両編成を諦めて6両編成のみで運転することもありますね。」

 

ココア「てことは……あっ!次の電車はEXEで、10両分が箱根湯本駅に入らないから、箱根湯本行きと片瀬江ノ島行きがあるってことだね!」

 

チノ「はい、その通りです。あ、来ましたよロマンスカー!」

 

ココア「ほんとだ!乗るよチノちゃん!いざ箱根へ!!」

 

チノ「あー、待ってください!走ったら危ないですよ!ココアさーん!」

 

 

 

新宿駅 20分前〜

 

???「今日はお母さんに黙って来ちゃった!」

 

???「いいのか?連絡くらいした方が……?」

 

???「ううん、いいの!せっかくの???くんとの新婚旅行だもん!もし引き止められでもしたら面倒だし!」

 

???「もう…???はしょうがないな〜帰ったらちゃんと謝るんだぞ。」

 

???「わかってるって!…それより、???くん!箱根、楽しみだね!!」

 

 

 

第3羽につづく